人にあらざるものの物語 【南総恋歌・感想】
2013/05/06(Mon)
GWは持ってる八犬伝の舞台DVDを消化することが目標でした。何とか達成できましたが感想作業は無理でした。まあまずとにかく消化しよう、見ておこうと。何となく新八犬伝劇場版のDVDから始めた消化だったのでじゃあ、年代順に見ていくかと決め、2005年の舞台のDVDをまず見ました。と言うか実はこれが一番気になってたものだったりもするけど。
劇団卜社さんの「南総恋歌」2005年7月公演。です。
南総恋歌ぱっけーじ
配役宝典さんでいろんな八犬伝キャラのキャストを見ていたら、舞台作品で見慣れないものが…なんだろうこの作品、とググってみたら通販ページが。正直このくらい昔のものがDVDで手に入れることが可能だとは。どこの劇団もそうはいかない、そもそも舞台ってナマモノであることが至上だからDVD自体まずなかったりするし。だからDVDがあったこと自体びっくりしました。

こちらで通販しております。ストーリーもありますのでそちらを参照のこと。八犬伝なのですが犬士は出てきません。なら誰が出てくるかと言うと伏姫・大輔・義実・玉梓・そして八房、いや八房党…そう、八房は犬ではなく人間、けれども「人ではあらず」と蔑まれ恐れられた集団のこと。
これは八犬伝の始まりの始まりを大胆に脚色し八犬伝らしいファンタジーを排した作品なのです。これから感想書きますが、大変良いリライトでございました。面白かったです! 皆さん是非是非どうぞ。
んでは以下めちゃくちゃネタバレありでございます。と言ってもストーリーの流れを詳細に書いてるわけじゃないけどね。






「妖怪も妖術も出てこない」と銘打ってあるだけ、本当に人と人とのぶつかり合いを描いていた八犬伝でした。勿論夢見の術とか、多少のファンタジー要素はあるけど、いわゆる八犬伝二次作品につきものないかにもな要素はナイよってことで。珠とか化け猫とかね。
この演劇が材をとっているのは八犬伝の始まりの始まりのところ。義実の建国譚(ちょっと言い過ぎ?)と伏姫物語の辺りですね。犬の名を持つ伏姫の子としての八犬士達は出てきません。具体的に言うと義実の安房国盗り物語というか定包戦だったり、あるいは安西戦を上手く混ぜ合わせて独自の伏姫物語を作りだしてました。物語が歴史になると書かれているのですが八犬伝をもっと自分達の現実的な事情に迫っているものにするなら発端はこうかなって。ま、一言で言うと伏姫物語のリライトですね。わたしもちょうど今その辺りを小説で書いてるところ、という事情もあるのですがもともとすごく好きなところなので、そういう贔屓目もあるかもしれないんですけど、でもそれを除いても多分すごくいいリライトだなと心底思いました。まあわたしの好きな玉梓をちゃんと描いてたら自然とわたしのポイント高くなりますわねw 結局贔屓目じゃないかーw!

「恋歌」とタイトルについてるだけあって、恋愛群像劇なんです。八犬伝て信乃と浜路のカプがよく描かれるけど、恋愛を主題にとったのって少ないと思う。いろんなカップルがいたのです。伏姫と八房の親兵衛、志乃と親兵衛、伏姫と大輔、志乃と大輔、玉梓と景連。それから八房党の中でも女郎花と大記、桔梗と源弥。ストーリーが縦軸ならこれらのカップルと他の人物との関係が横軸になってるって感じ。いろんな意味で人間ドラマに特化した八犬伝でした。ああうん、犬士は出ないけど、サブタイトルに創史八犬伝とついてるので。

最近ちょこちょこ書いてるんですが、八犬伝二次作品ってよく犬士に当たる人達を被差別階級と言いますか、いわゆるマイノリティ、あるいは弱者になぞらえてたりするんですね。一番いい例が一連の「伏」作品で、狩られなければいけない、殺してもいい対象になってる。他だったら例えば「るいは智を呼ぶ」だと呪いの所為で一般社会に上手く馴染めない子達がいて、「BLIND GAME」は超能力や常人を超越した身体能力とか、まあ良い風に書くけどいわばそれもマイノリティで、「合い言葉は勇気」の富増村側は弱者なわけで。
で、「南総恋歌」はパンフレットにもはっきり書いてあるように社会に設けられた被差別階級「非人」を、「人にあらずの者」を原典では犬に当たる八房を当てて「八房党」にしてるのですね。梁山泊に集う豪傑達みたいな感じをイメージしていただければ。まあでも別に珍しい話じゃないけど。八房を犬じゃなく「差別階級にいる人」にした二次作品はいくつか見てます(湯浅みき「唐獅子牡丹」・劇団K@ZARIDRIVE「八犬伝 獣偏吠える」) 「人にあらず」の者たちをテーマに、主役してる。そこからの解放、どうあるべきか。そこが強く出てたな、でもそんなに説教臭くなくて良かった。この劇団卜社が関西の劇団だからなのもあるかな。大阪は差別意識強いって昔からよく聞く…
八房達だけじゃなくて大輔と玉梓も「非人」の生まれで(この二人が姉弟って設定なんですよ~これ魅力的な設定でした^^)景連も妾腹の生まれで。皆「人にあらず」と言いながらも必死で「人」であろうとしてる。あるいは、「人」であろうとしてでも結局「人にあらず」なんだって思って絶望したりもする。そうやってもがき苦しみながらそれぞれが「人」になろうとしてくドラマは見ごたえがありました。
私みたいなやつが言えるようなことじゃないけど、本当は皆同じなんですよね。確かに生まれや身分って言うのは重要かもしれないし自分を決定づけてしまうものの一つだろうけど、でもそんなのって大きな目から見たらすごいどうでもいいものなんじゃないかなって。あるいは長い目で見たら。わたしはわたしだし、あなたはあなたであると。伏姫もこの舞台の中で言ってたはず。「親兵衛様は親兵衛様でしょう?」 そうなんです、私この手のセリフにめちゃ弱いのです。なのでもう、あっこれは好きだわこの舞台好きだわ…ってノックアウトされちゃったよう。こういう高貴なものと下賤なものの恋愛ってベタだけど大好きなんですよ。

それから差別を言い換えて「支配」って言うのもよかった。これ原典の玉梓とか考えてもそうだと思うんだよなー支配されてるように見えて支配してたのって玉梓じゃん。女は誰かに支配されなくちゃ生きていけないから。そろそろ玉梓のこの辺りの執筆に入るところですがそんな背景もあって玉梓と景連、玉梓と大輔のやりとりは興味深く見てました。てか玉梓と景連がすごくよかったの…玉梓でノマカプ萌えってほんと稀少過ぎて…「暗闇を抱えたあなた だからこそわたくしは好きになりました」とか「この玉梓、どこまでもお伴致します!」なんて、は~~ そうだね玉梓がちゃんと一人のキャラクターとして踏み込んで描写されてるからこの舞台好きなのかも。あと私姉キャラ大好きなんですけど、玉梓大輔の姉なので「たまには顔を見せに来なさい」って言うお姉さんな玉梓すっごい萌えツボ入りました。いいものをありがとうございました。しかし玉梓を殺したのは大輔って言うのも業だよなあ… 玉梓が呪いの言葉放っておいて最後はぽつりと、って感じで「大輔、どうしてわたしに嘘をついたの」って言うのが…ああ玉梓…(´;ω;`)

それから志乃がすんごい切なかった(´;ω;`) ボクッ子で親兵衛の想いは家族の情だって言い訳してて自分の恋情をずっと隠してて…伏姫のこともちゃんと好きだから憎めなくて、早く自分の気持ちに素直になっておけばよかったって言うのが(´;ω;`) 「どうして親兵衛の味方にばっかり」って言うのもざくざく。一回だけだったかもしんないけど「僕」じゃなくて「あたし」って女の一人称になってたのも…ああメモ見つけた。「どうして僕じゃないんだよ、あたしのそばにいてよお!」って言う……思い返してつくづく思う、この八房の志乃は辛いキャラだった(; _ ;)切なすぎる…メモ見返すと最初らへんのセリフ「僕はずっと親兵衛の傍にいる。だって家族だろ?」が余計つらいうぐぐ。
志乃と対になる大輔も。M&Oの見た時も思ったけどこういう大輔も見たかったので嬉しかったです。姫を得て人となる!って言う、自分の野心がぎらぎらしてるようなの。その為に義実をけしかけて定包を討とうとしたり、八房の親兵衛と戦ったりするのとか。そういうの抑えられてると思うから、八犬伝の大輔は。ラスト、義実に迫る大輔が鬼気迫っててよかったです。

ほか。義実がいい人物でしたね。最近の作品で言えばキョウリュウジャーのキングみたいな方。八房党の皆からも好感度高かったし。「だが共に歩む(生きるだったかも)ことは出来よう」なんてもののけ姫のアシタカみたいだなーなんて思ったり。「この義実の言葉、軽くてはいかんのだ」って言うのが軽く伏線になってるっていうか、ああ…業を感じた。「間違っていたのは、この俺だあ――っ!」って終盤伏姫と親兵衛のもとへ走っていくのが最高に良かったです。
伏姫、最初に見た時はそんなに出てこないなって思ったんですけど二回目見てみるとそんなことはなかった。衣装が可愛い&セクシーで素敵だった。「だって夫婦の間には身分の差などありませんでしょう?」って言うの可愛い。無邪気だ…無垢だ…女神だ……

で、八犬伝と言えば仁義八行の文字ですが、それがいいところに使われてて鳥肌たっちゃった。だって珠出てこないもんだと思ってたから無いと思ってたので、ああそんなところに!と。何かと言うと親兵衛の父が持ってた刀の刃に仁義礼智忠信孝悌って書かれてるのだ。不思議ですよね。人が守るべき八つの教えを人にあらずの者が持っていたって言うの。「人にあらずの父親が後生大事に」「いいえ、だからこそお父様は人であろうとした」って台詞もあったけど
これが出てくるのはラストもラスト、伏姫が死ぬところです。南総恋歌は哀しいことや辛いことがいっぱいあった末に伏姫の死で終わるけどけどバッドエンドではない。「その八つの光が(差別のない)あまねく人々に降り注ぐような国を作ってください」という伏姫の遺言があって、安房の新しい明日を創る為に親兵衛は義実に仕えることになる……っていう。いいエンドだなあと思いました本当。

いやあいいリライト見れてよかったです。大分前の作品だからDVDもう在庫なかったりして、そもそも扱ってなかったりして…と思ったけど迅速に対応し発送してくださったTAKE-NOBLE演劇ビデオ館さんありがとうございます^^ 思い切りネタバレしてる感想だけどもし読んでて見てみたいなって方がいましたら是非ポチってみてくださいまし。
次の感想は続編の「DOGMAN BLEUS」の予定っ これから見る方は是非こちらとセットで購入してくださいね~
ちょっと不満を書くなら少し早口で台詞がきき取りづらかったこととと、BGMが若干うるさかったことかしら… 歌入りのBGMだったんだけど、この舞台の味をさらに引き出してたとは思うけど、ちょい邪魔だったかな…
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