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この世界の片隅に生きてゐる 【この世界の片隅に・ちょっと感想】
2016/12/22(Thu)
普通だったらアニメ全般にカテゴライズするところなんですが、広く見て頂きたい映画だと思ったのでえいがカテゴリに入れました。

この世界の片隅に 劇場アニメ公式ガイドブック
『この世界の片隅に』製作委員会
双葉社
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もともと原作はずっと前から知ってたのですがなかなか読む機会を得られず。というか、戦争の話で、それも広島(正確には呉)が舞台で、それはもう私の第一級のトラウマである原爆を扱うにも等しい……それでこの絵柄なのだから、きっと後半つらいことがわああっと連なって読んでいられないし、きっと残酷だろう…と思って、読む気がしなかったのですよ。それでもいい作品ですよってことはそっと風の噂で聞いていたので機会があったら…とずっと思ってきました。
それでこの度の劇場アニメの公開。クラウドファンディングの支援によって集まった製作費で作られた作品と言う経緯に加え、あののんちゃんが主演を務めるということが見に行かざるを得ない決定打になりました。そして公開されると予想はしてましたがあれよあれよの大絶賛。本当に今年は邦画なり映像作品なりが豊作だったのですが、最後の最後にとっておきが出てきてしまったなこれは、といったところでした。そして私も重い腰を上げ、映画を見に行くまでに原作を読むことにしました。電子書籍で。Kindleで買えばよかったと後悔している。

以下本編のネタバレなどもありますので続きにしまいますが、一言。お近くで上映していたならば是非、見に行ってください。戦時中だからと言って変わらない、私達が愛しく想うべき日常がそこには描かれています。その日常こそを私達は尊く想うべきであり、大事にすべきなのだと感じます。その気持ちを忘れずにいることこそ、そして生きていくことこそ、私達の使命なのだと感じます。







のっけからだらっと書きます。
のんちゃんの朴訥な語り口調とすずののんびりとしたところがすごく合っていてまさにベストキャスティング! 久々に演技するのんちゃんの声を聴けて嬉しかったし、過酷になっていく中でのんびりさ、穏やかさ、日常を楽しむ心を忘れないすずに限りなく愛しくなりました。ああ、国は戦争をしているけど、こうやって生きてきた人もいるし、こうやって生きてもいいのだと。
というか、大方ののんちゃん好きにもれず私はもともと朝ドラが大好きなのですが、最近は戦時中を劇中で描く朝ドラが多いです。もはや通過儀礼みたいになってます。でも朝ドラの中でも戦時中の日常というか、暮らしや生活、何気ない日々と言うものは大事にされていたように思います。なので朝ドラ好きな人はすずの北條家での暮らしにものすごく朝ドラアトモスフィアを感じていたと思います。

原作は最初からなんだろうこれ、これ本当に戦争中の話なのかな???と戸惑ってしまったりもしました。それくらい、一コマ一コマがものすごく愛しかったのです。すずと同じくゆっくり時間が流れる原作は、読み込むごとにじいいいん……と何もかもが響き、そして沁みてきて… 今年はいろんな漫画を読んだけど、こういう漫画もあるんだなあと素直に感心。他の作家さんでいうと深見じゅんのぽっかぽかのテンポ感に似てると思いました。
私達の暮らしと何ら変わりない日常というか、戦争までもあくまで日常の背景に過ぎないものになってしまうのがすごすぎたし、それが従来の戦争ものとは全く違うところだと感じました。確かにこの作品も多くの戦時ものと同じように戦争が主題になっていきます。でもそれでもメインテーマはすずと北條家の生きる姿にある。そう強く感じさせられました。すずが戦争というもの、そして生きること、生き残ってしまったことについて考え出していくのは後半、晴美を喪い己の右手も失ってしまうところ以降からですが、その帰結――着地点も最終的には生きること、彼女達の生活、暮らしの日々だったと思います。生きていくことが主題なのだ。つまるところ。「思い出の入れ物として生きていく」と確かすずは言っていたけど、そうなんだよね…とじんわり涙が出ました。

わたし戦争の何がいやって人間の尊厳がなくなること、善悪の区別がどうでもよくなることなんですよ。全てにおいて判断が鈍ってどうでもよくなること、自分の命さえ戦争の忙しさ、人命が軽んじられる中でどうでもよくなってしまうこと、当たり前に持ち合わせていた感情がなくなってしまうことがいやで。確かラストの方でその死体が自分の息子だと気付けなかった、考えもしなかったって何気なく出る台詞があるんですけど、まさにこれです。このちょっとした台詞が一番戦争の怖いところを表してるような気がしました。
この世界の片隅にのすずはそういう私の嫌だなと思ってることを、そういった感性を奪い取られないように生きていると思いました。でも晴美を喪って右手を失ってからのすずはどんどんそういった暗黒面に呑まれていくんですよね…原作でもブワーッてきた~~した右手、のところは声が何重にも重なって本当にぞくっとしました。すずが抱えた闇がぶわあって噴出してしまったのかと。私は結構、明るかった子が何かのはずみで自分の元気が出せなくなって暗くなってしまうって作品が好きで、この作品もそうだったのですが、すずの堕ちっぷりは今年見てきた中で一番かも知れない…さすがに言いすぎかしら。だからこそ、ちょっとずつ、ちょっとずつすずらしさを取り戻していくところは見ていて本当にじんわりと、暖かさをもらえました。

どんな人も、どんな時代でも、何が起こっていても世界の片隅にひとは生きている。生きていること、生きていくこと、日常の全てを愛しく大切に想える。そうしみじみと感じました。私達はすず達が生きてきたそういう日々の延長線上にいるのでしょう。そして続いていくのでしょうね。

あとは思い出し。
読んでて、意外とおやっ?と思ったのはすずが玉音放送受けて怒るところですかね。過去の朝ドラの主人公を思い出してみると、さ、お昼にしよけ、と感慨もなくあくまで日常に戻っていったり、その翌週ではおわったんやー!と大の字になって寝たり、あるいは自分のやりたいことが出来る!と未来に希望を抱いたり、って感じだったんで、すずもそういう路線なんだろうと思ってたらそうではなく。
でもそりゃそうだよな。怒るよなあ。姪を喪い、兄を喪い、自分は右手も失った。こんな暴力に屈するわけにはいかないとすずは思っていて、でも国は屈してしまったんだから。まさに悲しくてやりきれない… こうやってすずのように怒った人はどのくらいいただろう。みんな終わってよかった、ほっとしたーって人ばかりじゃなかっただろう。理不尽さに涙する人もいただろう。虚しいよなあ……自分も今書きながら苦い顔をしてしまっています。

戦時中クッキングはとても面白かったw し、おいしそうだったけど実際まずいんだろうなあ……その日の夕食は白いご飯の大切さを噛みしめてました。あと隣組の歌にのせて流れるアニメーションの可愛らしさw 原作に忠実って感じしました。
それと艦これ提督的に見逃せないのはやっぱりいろんな艦艇が出てきたこと!青葉~~! 青葉改二ホントこの作品公開記念で来てくれないだろうか。ここまで青葉がフューチャーされてたとは思いもよらなかった。呉と言えば大和も勿論、日向、利根、名前だけなら飛鷹とか隼鷹とか、あとドイツから来たUボートがって周作さんが言ってたので多分ろーちゃんもいるんだと思います。そして迫力のある、というか怖い空襲の場面……機銃掃射やめてそれ死ぬから! 焼夷弾が北條家に突き刺さって、それをぼーっとしたすずがハッとして何とか火消したとこ、あそこよかったなあ。好き。防空壕つくるとこと、そこでの雨宿りで周作とちゅーするとこもすごーく好き。んふふふ

本当に全体的に最高によかった作品なんですけど、いっこ残念なのはリン関係のシーンがほとんど削除されてたことです。ていうかリンと周作のこととかまるっとカットするって大分作品の意味変わると思うんですけど!? なんですずが周作にいらいらしてたかの意味、映画だけだとわかんなくない!? 私の大好きなお花見のシーンなかったら本当にまるきりそれ以降の意味とか重みとか変わってくるんですけど!! 周作さんにリンの安否を確認してもらうよう頼むのだって映画だけだと、なんか重要っぽかったけど何で?ってなるんですよ! ねえねえなんで!? 片淵監督なんで?!?!
……って感じですが、監督的に重要視したのはすずと北條家の生きる日々だったのだと思うし、私もこの不満はむしろ「あえて言うなら」レベルで、全然今の状態でもアリだと思ってます。でもホントリンとのシーンものすっっっっごく期待してたので(もうとにかく、少しお姉さんと女主人公の組み合わせが大体どんな作品でもたまらなく好き)でも確かお花見のシーンのカットどっかで見たことある覚えがあるので、DVD版とか出るなら是非完全版として収録していただきたいと思います。よろしくお願いします! 映画だけ見た人は今すぐ原作も読んでくれ! 尺の都合でカットしたであろうエピソードもいっぱいありますのでっ…!!

ということでこの辺で。明日都合ついたら二回目見てきたいと思います!

あ。あと一個書き忘れた。
この作品を見ていて思い出したのがアンネの日記でした。ナチスドイツの迫害から逃れるため、ユダヤ人一家のフランク家はオランダに隠れ家を作りそこで数年暮らすのですが、14歳の思春期真っ只中だったアンネ・フランクがその隠れ家生活で起きたあれこれを赤裸々に日記に綴っているのです。そう、つまりこの世界の片隅にに描かれたような日常です。勿論呉とオランダでは全然状況は違いますが、あの日記の中でも何気ない出来事、少女らしい恋、親との確執、同居人への不満、そして平和への祈りと未来への希望が書かれています。
残念ながらこの作品とは違ってアンネ達は捕えられ、アンネのお父さん以外全員がガス室で殺害され、あるいは収容所にて病死していますが……この作品と同じように、大切なことは日常の中にあったのだと、どうしても思わざるを得なかったのです。この世界の片隅にを気に入った方は、是非アンネの日記も手に取って読んで下さると嬉しいです。
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